汎用軸受け材料の選び方
軸受け材料として最も多く利用されるのは、リン青銅・鉛青銅・高鉛青銅です。
これらの金属は、単一金属では一般に両立しにくい性質をもっています。たとえば、同一の金属に耐荷重性となじみ性のような相反する性質を求めることは困難です。それ故その適性を判断する前に、目的に合った合金を注意深く調べる必要があります。
青銅材料も全く同様で、きわめて広い使用範囲、さまざまな運転条件などに対応するために、いろいろな成分のものが必要とされます。一方、製造方法によっても、性質を変えることは可能ですが、他元素を加えた方が簡単に青銅の性質を変えることができるので、製造方法を考えるよりも、合金成分を考えた方がより実際的です。
汎用軸受け材料一覧
ソリッド材
材料記号 | C5111 | C5191 | C5212 | |
---|---|---|---|---|
名称 | リン青銅 | リン青銅 | リン青銅 | |
製法 | 圧延 | 圧延 | 圧延 | |
化学成分 % |
Cu | 残 | 残 | 残 |
Sn | 3.5~4.5 | 5.5~7.0 | 7.0~9.0 | |
Pb | – | – | – | |
Zn | – | – | – | |
P | 0.03~0.35 | 0.03~0.35 | 0.03~0.35 | |
Sb | – | – | – | |
Fe | – | – | – | |
Ni | – | – | – | |
その他 | <0.5 | <0.5 | <0.5 | |
相当規格 | JIS | C5111 | C5191 | C5212 |
SAE | – | – | – |
バイメタル材
材料記号 | SB1 | SB2 | SBS6 | SBS7 | SBS8 | SBS9 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | リン青銅 | リン青銅 | 鉛青銅 | 鉛青銅 | 鉛青銅 | 高鉛青銅 | |
製法 | 圧着 | 圧着 | 焼結 | 焼結 | 焼結 | 焼結 | |
化学成分% | Cu | 残 | 残 | 残 | >77.0 | >83.0 | 68.5~75.5 |
Sn | 3.5~4.5 | 5.5~7.0 | 3.5~4.5 | 9.0~11.0 | 3.5~4.5 | 3.0~4.0 | |
Pb | – | – | 3.5~4.5 | 9.0~10.0 | 7.0~9.0 | 21.0~25.0 | |
Zn | – | – | <4.0 | <0.75 | <4.0 | <3.0 | |
P | 0.03~0.35 | 0.03~0.35 | – | – | – | – | |
Sb | – | – | – | <0.5 | <0.5 | <0.5 | |
Fe | – | – | – | <0.35 | <0.35 | <0.35 | |
Ni | – | – | – | <0.5 | <0.5 | <0.5 | |
その他 | <0.5 | <0.5 | <0.2 | <0.4 | <0.3 | <0.4 | |
相当規格 | JIS | (C5111) | S7 (C5191) |
– | S5 (CAC603) |
– | – |
SAE | – | – | 796 | 797 | 798 | 799 |
高荷重・低速用軸受け合金-リン青銅
速度と荷重
このグループの荷重は、62MPa(630kgf/c㎡)以下で使用し、速度は低くしなければなりません。
通常、120m/min(2m/s)以下にし、錫青銅はCu-Sn比によって高荷重、衝撃等に耐えるものになります。
このグループの合金は、硬くて剛性に富み、比較的高い物理的性質を有しております。
それ故に正確なアライメント、良好な潤滑、硬いシャフトなどが要求されます。また良好な耐食性を有しております。
諸性質
項目 | 単位 | C5111 | C5191 | C5212 | SB1 | SB2 |
---|---|---|---|---|---|---|
引張強さ | MPa(kgf/㎟) | 343(>35) | 392(>40) | 490(>50) | 343(>35) | 392(>40) |
硬さ | HRB(合金) | >65 | >75 | >80 | >65 | >75 |
圧縮耐力 | MPa(Kgf/c㎡)(0.2%歪) | 686(7000) | 784(8000) | 843(8600) | 686(7000) | 784(8000) |
伸び | % | >15 | >20 | >20 | >15 | >20 |
性能
材料記号 | 許容最高荷重MPa(kgf/c㎡) | 許容最高速度m/s | 使用限界温度℃ |
---|---|---|---|
C5111 | 62(630) | 2 | 250 |
C5191 | 64(650) | 2 | 250 |
C5212 | 67(680) | 2 | 250 |
SB1 | 62(630) | 2 | 250 |
SB2 | 64(650) | 2 | 250 |
中荷重・中速用軸受け合金-鉛青銅
速度と荷重
このグループの荷重は48MPa(490kgf/c㎡)以下で、表面速度は普通360m/min(6m/s)以下にします。
このグループの合金は少なくとも3.5%Pb-3.5%Sn以上から成り立っている合金で、Cu-Sn-Pb合金中最も有用です。
Cu-Sn比を上げると耐荷重性のものになり、Pb量が多くすると摩擦係数が減り、表面性能が良くなります。
このため、さまざまな組み合わせにより、広範囲な使用条件下で用いられるグループです。
このグループは良好な耐摩耗性、耐荷重性、耐衝撃性および耐熱性があり、速度と荷重が問題となる軸受けに使用できます。またわずかなシャフトのミスアライメントに対して順応性をもっております。物理的性質はリン青銅と高鉛青銅の中間です。
諸性質
項目 | 単位 | SBS6 | SBS7 | SBS8 |
---|---|---|---|---|
引張強さ | MPa(kgf/㎟) | 314(>32) | 349(>35) | 294(>30) |
硬さ | HV(合金) | >50 | >55 | >45 |
圧縮耐力 | MPa(kgf/c㎡)(0.2%歪) | 235(2400) | 294(3000) | 196(2000) |
伸び | % | >10 | >10 | >10 |
性能
材料記号 | 許容最高荷重MPa(kgf/c㎡) | 許容最高速度m/s | 使用限界温度℃ |
---|---|---|---|
SBS6 | 31(320) | 5 | 200 |
SBS7 | 48(490) | 10 | 200 |
SBS8 | 31(320) | 7 | 200 |
低荷重・高速用軸受け合金-高鉛青銅
速度と荷重
普通29MPa(300kgf/c㎡)以下の荷重で240m/min(4m/s)以上の速度です。
この合金は低錫・高鉛の合金で多少、可塑性ですので、ミスアライメントに対して機械的になじむ性質と、油中の摩耗粉や異物を埋め入れて、軸を傷つけないようにする性質を多く有しております。
この塑性は反対に低い物理的性質となってあらわれ、鉛含有量によって潤滑不完全な境界潤滑状態でも使用されますが、衝撃荷重のかかるところにはなるべく避けることをおすすめします。
諸性質
項目 | 単位 | SBS9 |
---|---|---|
引張強さ | MPa(kgf/㎟) | 274(>28) |
硬さ | HV(合金) | >30 |
圧縮耐力 | MPa(kgf/c㎡)(0.2%歪) | 157(1600) |
伸び | % | >10 |
性能
材料記号 | 許容最高荷重MPa(kgf/c㎡) | 許容最高速度m/s | 使用限界温度℃ |
---|---|---|---|
SBS9 | 29(300) | 15 | 200 |